ベートーヴェン 序曲集 クリュイタンス&ベルリン・フィル

ベートーヴェン:序曲集

アンドレ・クリュイタンス指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

[2015年発売・1958-1960年録音]

 

[収録曲]

◎レオノーレ序曲第3番

◎コリオラン序曲

◎プロメテウスの創造物序曲

◎エグモント序曲

◎アテネの廃墟序曲

◎フィデリオ序曲

ベートーヴェンの序曲集を初めて私が買ったのが、確か小学生高学年か中学生低学年の時。貧乏な私が何とか購入できたのは、1300円の廉価版(ニュー・セラフィム・ベスト100シリーズ)。それが当盤である。長らく廃盤となっていたが、タワー・レコードがSACD化して再発売してくれた。たいへんありがたい。

 

少年期の私はこのLPを大変気に入っていて、盤が傷つくのをおそれてテープにダビングし、ラジカセで何度も何度も聴いていた。しかも、恥ずかしながら、指揮者のマネをして菜箸を振り回しながら聴いていたのである。序曲集なので、1曲1曲が短いため、腕が疲れにくい。そしてクリュイタンスの指揮はインテンポ&中庸のテンポを基調としているので、エアー・コンダクター?初心者にとっては、とっても指揮しやすい。同指揮者の交響曲全集よりは強拍のアクセントをすっぱりと強調するため、合わせやすさに拍車がかかる。加えて、木管群がすっと前に出てきて色彩豊かに奏でてくれるので、「次、フルート、心をこめて!」などと左手で指示を出しやすいのだ(苦笑)。

 

約30年ぶりにリマスタリングされたSACDで聴き直したわけだが、印象は少年期の時に感じたそれと変わらない。凛とした良い演奏である。お勧め。ただし、リマスタリングはかなり成功しているとは思うのだが、元々がステレオ初期の時代の録音であるから、どうしても一定の限界がある。テープヒスもかなり大きく聞こえる。コリオラン序曲ではゴーストもやや目立つ。交響曲全集を録音している合間に徐々に録音されていったものを集めたものだから、音場等は統一されていない。その不統一感がリマスタリングによってかえってはっきりとわかるようになった。音の良さにこだわる人たちは、これらの点を我慢する必要あり。

[中川孝博 2015年6月22日記]