はじめに
先に「2023年K-POP私的お薦めアルバムBest 10」をアップしましたが、同じように2024年ヴァージョンも作ってみましょう。今年は豊作の年で、とても10枚には収まらないと思い、Best15に拡大しようと考えていたのですが、「自分が反復して聴いた回数」を基準にすると案外はっきり差がついたので、やはりBest10にとさせていただきます。代わりに、圏外になったけれどもぜひ聴いていただきたいアルバム9つと、特に思い入れのあるシングル3つも紹介します。
2023年版とほぼ同様に、下記の方針で作っていきます(赤字の部分は今年新設した方針です)。
(1) 女性グループのアルバムに限ります。今の私には男性グループの曲は力強すぎて、1曲だけだとよいのですがアルバムを通して聴くと著しく疲れてしまうので。
(2) アルバムの画像をクリックすると amazon music にアップされている当該アルバムに飛びます。
(3) MVは原則としてタイトル曲1つだけを挙げます(例外もあります)。
(4) 2024年中に複数のアルバムを出しているグループについては原則として1つに絞り込みます。絞ることができないときは、同じ順位の中で併記します。
(5) 普段はクラシックとヘヴィ・メタルしか聴いていないミドル・エイジが選んでおりますので、偏っています。
この1年間、全てのヨジャ・アイドルの新曲をチェックし、何度も更新を繰り返してきましたが、なんとか完成にこぎつけることができした。見守ってこられたみなさま、ありがとうございました!
最初に一覧をお示しします。
1.最も聴いたアルバム10選
第1位 ARTMS: Dall
第2位 PURPLE KISS: BXX + HEADWAY
第3位 Weeekly: Bliss
第4位 RESCENE: SCENEDROME
第5位 IVE: SWITCH
第6位 (G)I-DLE: 2
第7位 Candy Shop: Girl's Don't Cry
第8位 H1-KEY: LOVE or HATE
第9位 Billlie: Of All We Have Lost
第10位 ICHILLIN': Feelin' Hot + Prequel
2.他の素敵なアルバム9選(グループ名のアルファベット順)
Dreamcatcher: VirtuouS
ITZY: BORN TO BE + GOLD
KISS OF LIFE: Lose Yourself
NMIXX: Fe3O4: BREAK + Fe3O4: STICK OUT
OH MY GIRL: Dreamy Resonance
Red Velvet: Cosmic
STAYC: Metamorphic
TWICE: With YOU-th
WOOAH: UNFRAMED
3.どうしても取り上げたいシングル3選(グループ名のアルファベット順)
fromis_9: Supersonic + from
SPIA: Deeeep
VVUP: Ain′t Nobody
1.最も聴いたアルバム10選
第1位 ARTMS: Dall
- ARTMS(アルテミス)のデビュー・アルバム。全員が安定した技術・経験・喉を持っているため、安心して曲に浸ることができる。
- 5人の声の性質は似通っており、クラシックの用語でいえば、全員がソプラノ・レジェロまたはソプラノ・リリコ・レジェロ、つまり、軽い声に分類されると思う。ドラマティックな声は出せない代わりに、素早い装飾的なパッセージ等を得意とする声である。本アルバムの制作陣は5人の声の特徴を存分に活かした曲を作っていて素晴らしい。例えば、ロックでよく用いられる8ビートをメインに用いた曲は 'Virtual Angel' くらいしかなく、16ビートの曲がほとんどだが、これによりおのずとメロディは16分音符主体となり、音数の多い装飾的なパッセージを自然な形で盛り込むことができているように思う。パワフルな曲はないけれども、技巧をこらした軽くやわらかい極上の声に酔いたいときには、このアルバムが随一だ。超おススメ。
- 2024年7月27日14:00の公演@Zepp横浜に行ってきました。期待通り、歌唱力は抜群でした。特に、激しいダンスがなくハンドマイクで歌った曲については、ただただ凄かったです。音程は全く外さず、ブレスも安定の極み。アルバムと比べると若干間引いていたような気もしますが、高度な技術もちゃんと用いていました。あえて注文を付けるとすると、バックトラックとの音量バランスですかね。彼女らの軽やかで繊細な声が引き立つように、もう少しバックを絞り、かつ、重低音を削ればよいのに、と思う瞬間が結構ありました。それはともかく、ライブでも確かな技術を発揮できるグループであることが確認できたので、応援の熱がさらに高まりました。次のアルバム、大いに期待しましょう。

写真:日本公演の様子(2024年7月27日14:00公演@Zepp横浜。撮影自由の公演だったので撮影・アップさせていただきました。)
MV: Flower Rhythm
第2位 PURPLE KISS: BXX + HEADWAY
【BXX の感想】
- この世代の中では最も歌唱力が高い(特にスアン氏は天才だと思う)と思われるグループの良作。オート・チューンによる音程補正等がほとんどなされていないと感じられるナチュラルな声。聴いていて安らぎをおぼえる。一聴しただけだと比較的地味な曲が並んでいるように感じられるかもしれないが、繰り返し聞くほどにじわりとその良さが心にしみ込んでいく。
- このグループの曲は、ヴォーカルを邪魔するアレンジやミキシングがなされることが多いのが不満だったのだが、本盤の 'Heart Attack' は低音バランスが非常にナチュラルで圧が強くなく、かつ、スネアを低い音域にしておりヴォーカルを全く邪魔しておらず、出色の出来。ぜひ、今後はこの方向でのアレンジおよびミキシングをデフォルトとしていただくよう切に望む。
【HEADWAY の感想】
- このグループのアルバムについては、抜群の歌唱を邪魔しないサウンド作りをしてほしいとずっとお願いしてきたのだが、とうとうこの願いが叶った。全ての曲につき、スネア等がヴォーカルを邪魔しない仕様に!
- 曲は、ヒップ・ホップ的な要素をかなり削ぎ、8ビート主体のロック調、R&B調が支配しており、私の好みど真ん中。大満足です。
- 残念ながら、Purple Kissはなかなかフルアルバムを出してくれない。仕方がないので、BBXがA面、HEADWAYがB面のフル・アルバムと考えることにして、つなげて聴いています。 ここでも2つ並べて紹介しました。
第3位 Weeekly: Bliss
- クラシカルで流麗なメロディがふんだんに盛り込まれた良作。私が夏に書いた原稿のほとんどはこのアルバムをBGMにしている(笑)
- "Dance Dance! Dance!" ではワーグナーのローエングリンから「婚礼の合唱」のメロディが引用される。ローエングリンは、守るのが困難なルールを上から目線のローエングリンが花嫁に課し、案の定ルールを破った花嫁に結婚初日で別れを告げるという、女性目線からみるとヤバすぎるストーリなのだが、本作の歌詞は女性の連帯を呼びかける感じのものなので、なかなか皮肉がきいた引用だ。
MV: LIGHTS ON
第4位 RESCENE: SCENEDROME
- 子どもの声はあまり好きでないので、このアルバムが上位にくることは自分でも意外だが、実際、確かにたくさん聴いている。私が秋から冬にかけて書いた原稿のほとんどはこのアルバムをBGMにしている(笑)
- こんなに聴かせるのは、「滑らかさ」が際立っていて耳に心地よいからだと思う。例その1。1曲目 "Lucky you" のサビは ❶シーシレーシー ❷シ♭ーシ♭レーシ♭ーラーソ ❸ドードレードー ❹レーソミ レーソミミミ という4つのフレーズで構成されているが、❶❷❸❹いずれも違う音なのに、いずれも上昇して下降するという点は同じであり、非常に滑らかにつながっている。かつ、これを2回反復したあと間奏のギターソロが始まったと思ったら、実はこの間奏の進行はサビと全く同じであり、❶❷❸のサイケなメロディをギターがなぞったあとに❹だけはヴォーカルが歌う。この間奏は、間奏でもあるが、サビの続きでもあるわけだ。ここではサビと間奏の区別が曖昧にされている。
- 例その2。タイトル曲 "LOVE ATTACK" では、ミ→ファ♯→ソと順次上昇するBメロのコード進行はC→D→Gで、その後に続くサビのコード進行はC→D→G→Em。最初の3つは同じで、Bメロは実質的にサビを予告する役割を果たしている。単調だと感じさせることなくアレンジを工夫しつつ、同じ素材を用いてパートをスムーズにつなげている。ここではBメロとサビの区別が曖昧にされている。
- これらのような仕掛けを積み重ねて、滑らかさを感じさせる佳曲群に仕上げている。その結果、聴き手はたゆたう音の流れに身を委ねざるを得なくなり、中毒となっていく。いやはや、すばらしい作曲&アレンジだ。
MV: LOVE ATTACK
第5位 IVE: SWITCH
- 小中学生向きの曲を歌うグループと思っていたが、このアルバムにより、今後は私にもいけるかもしれないと思い始めた。メンバーの多くが大人の声に移行し始めているように感じている。
- 私が韓国語を学び始めてまだ日が浅いのだが、そんな私でも、このアルバムは曲を聴きながら歌詞カードをなんとか目で追っていける。メンバーの発音がとても良いからだろう。そしてさらに、1文字1音節というハングルの特徴をうまく活かしたメロディーやリズムの曲ばかりだからに違いないと勝手に確信している(韓国語が上達したら詳しく分析してみたい)。というわけで、韓国語修行中の私にとって、このアルバムはとにかく心地よい。
- 目で追うだけない。歌詞カードを見ずにぼおっと"Blue Heart"を聴いていたら、最後に "나는 나야" (私は私だ)と歌っているのが自然に聞き取れたのだ! このアルバムは、自然に歌詞が聞き取れた自分史上初のアルバムとして永遠に記憶されることになろう(なお、実際は "나는 나야"だけを切り取ってはだめで、正確には"다시 태어나는 나야"であり、「私は生まれ変わるんだ」という意味になるようです……)。
MV: Accendio
第6位 (G)I-DLE: 2
- 個性が際立つ声の饗宴。バラエティに富んだ良質の曲が楽しめる傑作。今作ではウギ氏の低域コントロール力が増したように感じられ、そのため全員の声がかつてないほどバランスよく並ぶ。過去の作品群と同じくアナログライクな太い音が心地よい。
- アルバムのクオリティだけを考えるとランキング1-3位に入ると思うが、聴いた数はそれほどでもないので順位が下がってしまった。強烈な曲が多くて聞き入ってしまうため、BGMにしにくいためです。
MV: Wife
第7位 Candy Shop: Girl's Don't Cry
*現時点でamazon musicにアップされていないようです。アップされたらアルバム写真にリンクを貼ります。

- デビュー・アルバムよりも声が若干成熟してきたし、曲も良い。ナチュラルで落ち着いた伴奏によるさわやかな佳曲が並ぶ。この伴奏が本当に良くて、地味だが凝っており、注目したい。
- 1曲目 'Don't Cry'は、ドラムが四つ打ちで一貫しているのだが、Bメロ前半ではドラムを止めてみたり、サビではベースのみに付点を付けてみたりと、飽きさせない工夫が随所で施されており、聞いていて楽しい。
- 2曲目 'Tumbler (Hot & Cold)' は、イントロで示された循環コードが全編にわたり反復される中でヴォーカルが節ごとにフレーズを微妙に変えていくのが面白い。うっかりすると曲がどこまで進みどこに向かっていくのかわからなくなるので、参考に曲の構造を簡単に書いておこう。イントロ(循環コードを提示。4小節)→サビ(8)→Aメロ(8)→Bメロ1(ラップ。4)+Bメロ2(前半アカペラ。4)→サビ(8)→間奏(8)→Aメロ(8)→Bメロ1(4)+Bメロ2(4)→サビ(8)→Bメロ1と間奏の要素を用いたコーダ(8+8)。
- 3曲目 'Welcome To My World' は、2番(2回目のAメロとBメロにあたる部分)のコード進行が1番と異なっていたり、AメロとBメロのテンポは同じなのにBメロのヴォーカルの音数を増やしてスピードアップしたような感覚を与えたり、レゲエ風のゆったりしたリズムを後半でせわしないものに変えたり(テンポ等を変えることなく音数を増やすだけで激しい変化に感じさせている)と、大仰でない微妙な変化を絶えず生じさせていく構成・アレンジが素晴らしい。
- 4曲目 'Good Girl' は、デビュー・アルバムのタイトル曲のリミックス。メンバーの交代があったので、新たな出発を宣言しているのだろうか。アレンジは今回のアルバムのテイストに合わせたナチュラルなもので、とても気に入っている。
MV: Don't Cry
第8位 H1-KEY: LOVE or HATE
- 間違っていたらごめんなさいだが、80年代から90年代頃のJ-POPの要素をふんだんに注入した哀愁のただよう佳作。
- タイトル曲 "Let It Burn" は、ハードな味付けがなされているものの、アレンジを変えれば竹内まりや(というか山下達郎。または大瀧詠一)っぽい曲になると思う。2曲目 "Letter" 、3曲目 "Iconic" 、4曲目 "Rainfalls"は、 今のK-POPでは珍しい、起承転結のはっきりした古典的な構成と、音を詰め込まず余白の多いアレンジ。いずれもラップパートを入れず「歌」だけで勝負。これらはもうCITY POPそのもの。
- 以上のように書くとオリジナリティがないようにみえるかもしれないが、そんなことはなく、現代らしく洗練された音のたたずまいと、K-POPらしい歌唱力の高さ(圧倒的にうまいわけではないが、水準は超えている)は、このグループと製作スタッフ陣の個性である。この個性を「洗練されたノスタルジー」と名付けてみよう。
- 願わくば、もう少し曲のバラエティを増やしたうえで、フルアルバムを。後にリリースされた、JOSH CULLENとのコラボ曲 "RE: Thinkin' About You" がレトロ・アメリカンな感じで良かったので、期待しています。
MV: Let It Burn
第9位 Billlie: Of All We Have Lost
- 7人中2人が活動休止という苦難を乗り越え、完全体でカムバック。曲種の幅が非常に広がり、それに伴い、歌唱力も上がっているように思う。このグループの曲は敬して遠ざけてきたのだが、ファンク、ジャズ、CITY POPの要素を動員した今回のアルバムは、僕らの世代でもなじみやすい。
MV: trampoline
第10位 ICHILLIN': Feelin' Hot + Prequel
【Feelin' Hot の感想】
- それほど有名なグループではないと思うが、一定の実力を持ち、今後さらに成長してくれる期待が持てる好印象のアルバム。多様な曲、しかもしっかりとしたアレンジの曲が揃っており、飽きさせない。
- 最後の曲を除き、オート・チューンの香りをほとんど感じさせず、多少荒けずりだがナチュラルな歌唱を味わえる。今後も期待したい。
MV: BITE ME
【Prequel の感想】
- シングル・アルバムなので本来ここでは対象に加えないのだが、歌唱面での成長著しいため、前作とセットで挙げさせていただいた。
- タイトル曲の "Official" は、クラシックなハウスミュージックの香り濃厚な曲だが、古臭い感じはなく、耳にすっと馴染む心地よい音。
MV: Official
2.他の素敵なアルバム9選
*グループ名のアルファベット順に紹介します。
Dreamcatcher: VirtuouS
- メタル好きな私としては、K-POPの女性アイドルグループの中で最も親近感をおぼえるグループ。今回も安定のクオリティ。
- 10位に入らなかったのは、冒頭のインストが長くて、バランスを失しているように感じられるから。フル・アルバムであればよいのだが、ミニ・アルバムでは長すぎる。
MV: JUSTICE
ITZY: BORN TO BE + GOLD
【BORN TO BE の感想】
- EDMやヒップホップ、特にメロディに抒情があまり盛り込まれていないものが本来苦手なので、これらのジャンルの曲をもっぱら出してくるITZYはちょっと苦手だった。が、このアルバムは、以前よりもロック色が強くなり、私にとってとても聴きやすいものとなった。明確にロックそのもののアレンジになっている曲は2曲ほどしかないが、おそらく全ての曲につき、ロック調のアレンジを施してもぴったりハマると思われる。
- 2024年5月17日の来日コンサートに参加してきた。本アルバムからはLIA氏のソロ曲と 'Dynamite' を除く全曲を演奏してくれた。コンサートでは、一部の曲を除き生バンドがバックをつとめ、多くの曲がロック調にアレンジされて演奏された。期待にたがわず、ああ、素晴らしいアレンジと演奏だった。ぜひライブ盤を出してほしい。初期の代表作群も、オリジナルよりも現在のライブ演奏のほうが格段に円熟した歌唱を聴かせてくれていたし、ぜひお願いします。
- 5人(1人はソロの1曲だけ参加)の声はそれぞれ個性が際立っており、同じように個性が際立っている(G)I-DLEとの類似性を感じさせる。が、彼女らのポテンシャルをスタッフが存分に引き出せているかといわれると、(G)I-DLEの域には至っていないと思う(これが本ブログにおいてランキングが下がる要因)。その原因はスタッフにあるような気がしている。レコーディングの様子を見せる動画を視聴する限り、専門的なディレクションが十分に与えられていないようにみえる。あるヴァラエティ番組において(G)I-DLEのソヨン氏がITZYのアルバムをプロデュースしてみたいと語っていたが、ITZYのスタッフチームはぜひこの申出を受けたらどうだろうか。(G)I-DLEのレコーディングの様子を見せる動画を見る限り、ソヨン氏のディレクション力は極めて高いので、彼女がプロデュースすればITZYのアルバムの歌唱はより高レベルのものになると思われる。
MV: BORN TO BE
【GOLD の感想】
- LIA氏が復帰して製作されたアルバム。ソヨン氏がディレクションをすることはなかったようだが、レコーディングの現場を紹介する動画をちらと視聴した限り、ディレクション担当の方が前作よりも積極的で、そのせいか、歌唱力(当該フレーズにふさわしい表現をつける力)が前作よりもアップしている。
- 今回再録音された "BORN TO BE" 収録曲が面白い。前作では暗く悲壮な曲集だったのに対し、今作では明るくのびやかな曲集になっている。アレンジが変わっているわけではないので、ひとえに歌い方の変化によるものだ。どうしても、LIA氏不在のもとでの前作とLIA氏復帰後の今作というグループのドラマが影響していると考えたくなるが、さてどうなのだろうか。いずれにせよ、前作と今作をセットで聴いてほしいので、2枚を併置させた。
MV: Imaginary Friend
KISS OF LIFE: Lose Yourself
- Midas Touch 以降、セクシーさを強調するMVを伴うシングル・アルバムが続き、いささか閉口していたのだが、このアルバムは傑作だと思う。ロック色がほぼ消え、ヒップホップ色が全面に出たため、私の嗜好から外れ、ランキング外になってしまったが、客観的には、曲、構成、歌唱、三拍子そろった、完成度の高い作品だとと思う。このグループは大好きなので、ぜひ次回は、ファンク色やロック色の復活をお願いします。
- 前からそうなのだが、英語ネイティヴが2人いるせいか、英詞の部分に不自然さ(教科書英語的な表現だったり、異様に単純な内容だったり)がない。歌詞の面でも、グローバルに受け容れられやすい作品になっている。
MV: Get Loud
NMIXX: Fe3O4: BREAK + Fe3O4: STICK OUT
【Fe3O4: BREAK の感想】
- 歌がとにかくうまい。特にLILY氏は天才だと思う。全員のアンサンブルも秀逸で、アドリブやコーラスを豊富に入れており、声の饗宴を存分に楽しめる。収録曲が多彩かつ独創的で、野心的なアルバムだ。未成年の声特有の不安定さと生硬さが少し苦手なので10位以内には入らなかったが、数年後が楽しみだ。
MV: Soñar (Breaker)
【Fe3O4: STICK OUT の感想】
- 前作 'Fe3O4: BREAK' と比べると、より声が安定してきた。それをふまえてか、サウンドもよりアダルトになり、和声進行にイレギュラーな要素を増やしたり、半音階のスケールを増やしたり、くぐもったローファイ調やダークな色調のサウンドに整えたりしている。正直、この試みはまだ早いと思う。私としてはもう少しメンバー(特にまだ10代のメンバー)の声の成熟を待ちたいところだが、曲のクオリティ自体は高いので、前作とセットで挙げさせていただく。以下、各曲の構造を簡単に紹介する。
- 1曲目 '별별별 (See that?)' (本来はピョルビョルビョル(ルは子音のみで母音は出さない)と発音するはずで、へウォン氏もインタビューではそのように発音していたが、曲中では「ビョルビョルビョル」と発音している気がする)。最初のうちは定石通り、イントロ (0:00) → Aメロ (0:20) → Bメロ (0:42) → サビ (0:51) と進んでいく(タイムはAmazon Musicにアップされているアルバムのもの。MVは独自の編集がぽつぽつあって尺が長くなっているので注意)。この後に、異なるジャンルを融合するMIX POPらしく、異質なCメロ (1:14) が挟み込まれる。いったんサビ (1:40) に戻るが、さらに、この曲の中で一番クラシカルな和声と印象的なメロディを持つDメロ (2:01) が挟み込まれる。最後はサビ (2:38) で締めくくられる。途中からクラシックのロンド形式のような感じになっていて面白い。
- 2曲目 'SICKUHH (Feat. Kid Milli)' は純然たるラップで、NMIXX初の試みだと思う。サビ (0:00) →Aメロ (0:17) →Bメロ (0:31) →サビ (0:45) →Aメロ (0:59) →Bメロ (1:13) →サビ (1:27) →サビ (1:41) →間奏 (1:54。Bメロのバックを使用) →アウトロ (2:08)。Kid Milli氏とメンバーが交互にラップする激しいアウトロがシメとして素晴らしいので、ぜひアルバムを聴いてほしい。
- 3曲目 'Red light sign, but we go' の構成は、短いイントロ (0:00) →Aメロ (0:03) →Bメロ1 (0:17) →Bメロ2 (0:32) →サビ(0:46) →Aメロ (1:00) →Bメロ1 (1:15) →Bメロ2 (1:29) →サビ (1:43) →サビ (1:57) →短いアウトロ (2:11) 。Bメロ1とBメロ2ではジャージークラブのビートが用いられている。このビートは速いテンポの曲で用いられるのが通常だと思うが、それをミドルテンポの本曲で用いているのが面白いところ。なお、サビはタイトルの 'Red light sign, but we go' が歌われている部分だと思うが、全編通して聴かれる重要モティーフ(ドッ ドシド~)をヴォーカルのメロディとして直接用いているのはBメロ2の部分。このズレも面白い。
- 4曲目 'BEAT BEAT' は、節目ごとに軸となるビートが目まぐるしくチェンジする楽しい曲。構成はイントロ (0:00) →Aメロ (0:07) →Bメロ (0:33) →サビ (0:46) →Aメロ (1:00) →Bメロ (1:27) →サビ (1:39) →Cメロ (1:52) →Bメロ (2:07) →サビ (2:20) →サビ (2:33) 。3曲目で用いられていたジャージークラブのビートは本曲のサビでも用いられているが、リズム隊でなくヴォーカルが担当しているのが面白い。間奏にあたるCメロのハーモニーが美しく、コーラスを得意とするNMIXXの本領発揮。ちなみに、本曲と似たような構造をとる曲として想起されるのはIVEの 'Accendio'。メロディでなくビート・チェンジのあり方に注目しつつ並べて聴いてみると面白いかも。また、本曲のアレンジを手掛けたのは HotSauce というチームだが、同じチームが手掛けたものとして、ICHILLIN' の 'DEMIGOD' という良曲があるので聴いてみてほしい。
- 5曲目 'Moving On' は本アルバムの中で最もテンポが遅い曲だが、スローナンバーというほどでもない。構成はイントロ (0:00) →Aメロ (0:21) →サビ1 (0:43) →サビ2 (1:10) →Aメロ (1:28) →サビ1 (1:49) →間奏 (2:16) →サビ1 (2:36) →サビ2 (3:00) →アウトロ (3:17) 。Bメロ(ブリッジ)にあたる部分がないが、サビの尺を長くとることでバランスをとっている。実質的なサビは「サビ1」で、「サビ2」は後奏として位置付けられるだろう。だから間奏の直前がサビ1だけでも違和感をおぼえない。
- 6曲目 'Love is Lonely' は、ハウスミュージックのスタイル。構成は、イントロ (0:00) →Aメロ (0:15) →Bメロ (0:45) →サビ1 (0:52) →サビ2 (1:23) →Aメロ(1:38) →Bメロ→(1:52) サビ1(2:00) →サビ2(2:30) →Cメロ(2:45) →サビ1(3:00。途中でフェード・アウト)。5曲目と同じく、サビが2部構成になっており、実質は前半・後半は後奏である。一瞬で通り過ぎるBメロの半音階下降が印象的。終わりがやたらとあっさりしており、サビをもっとループさせてほしいと思ってしまう。物足りない思いを解消するために何度も聴くことになり、中毒性が高まっていくことになる。
MV: 별별별 (See that?)
OH MY GIRL: Dreamy Resonance
- タイトル曲 'Classified' が圧倒的に素晴らしい。音を外しやすそうな難しいスケールやハーモニーが頻出し、聴いていてぞくぞくするスリリングな曲。それらを余裕で歌っているこのグループは凄すぎますね。2曲めはレトロな曲だが、高い歌唱力とレベルの高いアドリブ部分を連続させ、飽きさせない。
- 3-5曲目はデュエット曲。ここにややひっかかりをおぼえて圏外となった。10曲以上あるフル・アルバムにおいて3曲デュエットがあるのであればよいのだが、ミニ・アルバムの中ではややバランスを欠いているように思う。
MV: Classified
Red Velvet: Cosmic
- 10周年を迎えたRed Velvetのミニ・アルバム。素晴らしいの一言。
- 素晴らしいのに圏外になったのは個人的事情によるもの。私は、気に入ったアルバムが出るとしばらくそればかり聴いてそのアルバムの全てを堪能し尽くしたいと思う人なのだが、そんな私にRed Velvetのサイクルは早すぎるのだ。別のブログで書いたように、前作 "Chill Kill" は昨年の個人的Best1。まだまだこのアルバムに耽溺していたいのに、その後リリースされたWendy氏のソロ・アルバム "Wish You Hell" も良作で、これも聴いているうちに "Cosmic" のリリース。というわけで、本作を堪能できるようになるのはしばらく先のことになりそうである。
- ちなみに、本作の後にリリースされたIrene氏のソロ・アルバム "Like A Flower" は全くの手つかずである……
MV: Cosmic
STAYC: Metamorphic
- 多様な14曲が収録されているが、ベースはアメリカのPOPSといってよく、シンプルなコード進行の上にキャッチ―なメロディーがのる曲が多い。聴きやすいアルバムだが、歌唱もバックも非常に洗練されており、高レベルの作品だと思う。
- 圏外になった理由は主として2点。第一に、一部の曲においてオート・チューンのかけ具合がもっと控えめだったらさらによかった。第二に、どの曲もコード進行がいささかシンプル過ぎて、アルバム途中で飽きてしまいがちになる。コンセプトがしっかりしているのは良いのだが、もう少し曲構成上のヴァラエティを増やしていただけるとありがたい。
MV: Cheeky Icy Thang
TWICE: With YOU-th
- TWICEはずっと苦手だったのだが、本作収録の 'ONE SPARK' を聴いて涙があふれ、この曲を契機に苦手意識を克服することができそうな予感を覚えている。
- 本盤の魅力は、軽快さと抒情を見事に両立させた曲と、曲が求めているものをみごとに具現化しているメンバー全員の確かな歌唱技術にある。この魅力はTWICEならではだと思う。後継者は出ないかもしれない(思いつくのはIVEくらい)。
- ただし、音楽的には不満な点も多い。曲のヴァラエティが豊かとはいえないこと、リズムが単調なこと、ドラムにタムタムをほとんど用いていないこと、'RUSH' を除きベースの存在感が希薄なこと、verse-bridgeが繰り返される際にアレンジをほとんど変えていないこと、コーダに工夫がなくあっさり終わる曲が多いこと、等々。完成品でなく本格的にアレンジを始める前のデモを聴いている気分になる。歌詞につき英語の割合が多く韓国語の発音やアクセントを十分に味わえないことも不満。というわけで、上述した唯一無二の魅力にもかかわらず圏外となってしまう。
- 12月に出たミニ・アルバム "STRATEGY" のほうは曲のヴァラエティがより豊かになっており、個々のメンバーの歌唱もより引き立つような曲作りになっていて素晴らしい。軽快さがやや後退して、リズムが全体的に重めになっているところがちょっとひっかかるのでここでは挙げないが、完成度は高い(耳に馴染んできたら後日挙げるかも)。
MV: ONE SPARK
WOOAH: UNFRAMED
- アルバムのタイトル通り、様々なタイプの曲に挑戦した意欲作。ややまとまりに欠ける気がするので圏外になったが、1つ1つの曲は好きなものが多い。タイトル曲 "POM POM POM" はメタリックなアレンジが私の心を捉えてやまないが、サビの "POM POM POM" という歌詞が何だか軽く聞こえて、重いバックとちぐはぐな気がして残念。
MV: POM POM POM
3.どうしても取り上げたいシングル3選
*グループ名のアルファベット順に紹介します。
fromis_9: Supersonic + from
- 今年いっぱいで事務所との契約が終了してしまうグループのシングル2枚。"Supersonic" が夏にリリースされたときには、その歌唱力の高さと、メンバーのポテンシャルを最大限生かした作曲陣に感動し、このブログでも熱をこめて紹介した。特に2曲目の "Beat the Heat" のクロマティックなコーラスは圧巻だった。ああ、こんなに素晴らしいグループなのに……
- "from" は、ファンに贈られた最終リリース曲。ファンは涙なしには聴けないでしょう。私は、このグループの存在を知ったとたんに解散となったので、長年のファンとは違う意味で、気持ちの整理がつきません。契約終了が解散を意味するのではなく、別の事務所に移籍して活動を継続することを意味することを期待しましょう。
MV: Supersonic + fromis_9 (프로미스나인) with flover - ‘여기는 from.’
SPIA: Deeeep
- 今年デビューしたグループだが、事務所の力が弱いのか、デジタル・シングル2曲しか出せていない。もっと活動の場を与えてほしいと思う。
- 中音域をメインとする暖かくて柔らかい声と、この声をうまく活かした曲は、とても素晴らしい。歌詞で表現されている少女の切ない想いを、共感に満ちた声で表現しており、何度も聴いた。ジャージークラブのビートをこれほど柔らかくナイーブに用いた曲はないのではなかろうか。
- ぜひ多くの方にこの曲、そしてこのグループを認知していただきたいと願う。
MV: Deeeep (Dance Practice ヴァージョン)
VVUP: Ain′t Nobody
- 4人でデビューしたグループだが、夏に聴くにふさわしいさわやかなメロディの曲であるシングル"Ain't No Body" をリリースしてしばらく活動した後に1人が抜け、しばらく3人で活動していた。詳細は不明だが、ジユンという方を新メンバーに迎え、再び4人体制に戻ったようだ。12月30日にお披露目の意味合いを持つデジタル・シングル "4 Life" が出たので下にリンクを貼っておく。まだ幼い声だが、リズム感が良く、実力派に成長していくグループではないかと期待している。苦難を乗り越え頑張ってほしい。
MV: Ain't No Body, 4 Life